範人のちょっとした憂鬱/ゴーオン



 ゴーオンジャーに逃げられた。ピザはダメになった。バイト先はクビになった。黒い人には怒られた。
 ついてるんだか、ついてないんだか。

 範人はとぼとぼと夕暮れの道を歩いていた。新しいバイトをまた探さなくては。ついこの間変えたばかりなのに。気まぐれですぐに飽きてしまう自分の性格を厄介だとは思うが、今回は範人に非はない――と思う。
 ピザの配達中に変な奴ら――蛮機兵ウガッツと遭遇したのは望んでのことではない。もっとも、ゴーオンジャーの華麗な戦いに見入ってしまったのは確かに自分のせいだが。その後に、配達中のバイクを自称警察官という黒い人に取られたのも、範人のせいではないと思う。
 というか、他人様のバイク乗り逃げ(未遂?)しておいて、あの偉そうな態度。
 腹は立たないが、釈然としない。
 範人の方が先にゴーオンジャーに入れてほしいと頼んだのに、黒い人がしゃしゃり出て来たせいで逃げられてしまったのだ。順番は守るべきだと思う。
 あの黒い人はちょっと厄介だ。
「次がある……かな」
 見上げた空は夕焼けのオレンジ。
 次にあったときこそ、ゴーオンジャーに入ってやると心に決め――もっとも、黒い人に会ったらどうするかはわからないが――最後の階段を駆け上がった。

*  *  *

 でも、彼の時代はここから始まる……たぶん。