似ているかも知れない/ゴーオン



 連がオムライスの仕込みをしていると、明るい話し声が聞こえてきた。
 ふと窓から外を見やると、テーブルセットに早輝と範人の姿が見える。ふたりは向かい合って座り、仲良く何かをしゃべっていた。
 ふと興味にかられ、窓ガラスを少しだけ開けてみる。
「でね、きれいな世界にぽわわんって出ちゃって、そこでベアールたちに会ったんだよ」
「へぇー、そこ、面白そう!」
「でも、何にもなかったよ?」
「いいなぁ、3人だけそんなとこ行かれて」
「なに言ってるの、そのうち範人も行かれるって。ほら、スマイルスマイル」
 両手を伸ばした早輝が、範人の頬をむにゅっとつねって引き延ばす。
 連の位置からでは範人の顔はわからないが、どうやら笑顔になったらしい。早輝が満足そうに笑っている。
「サーキットの販売員かぁ。おれ、そのバイトはしたことないなぁ」
「そうなの?」
「けっこーいろいろやったんだ。こないだはバイク便やってたんだよ。ちょっと前はピザ屋だったんだけど、軍平のせいでクビになっちゃったんだよね」
「あの人、元警察官なんだってね。すごいよねー」
「人は見かけによらないよなー」
 そうでもないと思うのだが、口出しせずに連は仕込みを続けた。
 むしろ、軍平が普通の仕事をしているという方が納得いかない。あの偉そうな態度といい、自分に正義があると信じ切っているように見える態度といい。
「えっとー、窃盗罪?」
 不意の早輝の言葉に、連はレードルを落としそうになった。
 急いで顔を上げると、範人がなぜかうんうんとうなずいている。心なしか弾んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
「炎神ソウルとキャストだろー?」
「うん。ボンちゃん連れて行っちゃったから、誘拐も入るよね」
 ひょっとして、軍平の話だろうか。
「誘拐罪? あれ、でも、人間じゃないような……」
「じゃあ、やっぱり窃盗かな?」
「かなぁ」
「それと、えっと、不法侵入とー、脅迫? ボンちゃん、ドライバーで脅されたんだって」
「うわーひでー。お巡りさんがやることじゃないよなー」
 ひょっとしなくても軍平の話だった。
 軍平と範人は一緒にいたから、仲間だと思ったのだが、そういうわけでもないらしい。メモメモ、と探したが、あいにく上着の中。その上着は少し離れたテーブルの上にある。
 頭の中のメモにとりあえず書いておいて、連は作業に戻った。
 目の前にオムレツとケチャップがあったら、ケチャップで卵にメモったかもしれない。
「あと、車両盗難もやったんだよあいつ」
「そうなの?」
「おれのバイク乗って行っちゃったんだ。取り返したけど」
「じゃあ、未遂だね」
「お巡りさんなのにいっぱい前科ついてきたけど、大丈夫なのかな」
「うーん、きっと大丈夫だよ。ね?」
 早輝の笑顔に、範人は小さく首を傾げていた。満足そうな早輝の様子を見る限りでは、範人もどうやら笑顔を浮かべたらしいのだが。
 よくわからないふたりだ。
 なにが大丈夫なのだろうと首をひねりつつも、連は作業に戻った。
 これ以上遅れないために、窓もしっかり閉めて。

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 みんなお馬鹿さんで可愛いです、ゴーオン!