1日の最後に/キョウリュウ



 激動の1日だった。軽く肩を回しながら、ノブハルは愛車を止めた住宅街の方へと足を向けた。コインパーキングが見当たらず、路上駐車するしかなかった。
「デーボスもタイミングが悪いんだよなあ」
 出現の報は、車を走らせているときに入った。ハンドル操作を誤らなかったのは幸運としか思えない――なるべく安全運転を心がけてはいるが。仕事中じゃなくて本当によかった。自宅でもなにかと言い訳が大変だが、仕事を抜け出すのはもっと骨が折れる。
 どこかに車を入れようとしたのだが、一方通行の道が続いて、なかなか曲がることができなかった。土地勘もないからかなり焦った。
 しかも、軽トラの扉を閉めるときに携帯電話も鳴っていた。あの着信音は電話だ。
(戻ったら確認しないとなあ)
 妹からかも知れないし、仕事の依頼かも知れない。どちらにしても、留守番電話に吹きこまれているだろう。それかメールが入っているか。今日はレストランの電球を取り替える以外に仕事がなかったから、暗くなる前にもう一件くらいはこなしておきたいところだ。
 吹き抜ける風に首を縮める。ブルゾンもマフラーも助手席に放りっぱなしで来たのは失敗だった。まだ陽が高いとは言え2月、日陰を抜ける風は凍えそうなほど寒い。
「まさかなー、レストランにいたあいつがキョウリュウレッドだったとはなあ」
 運命のいたずらだろうか。他のキョウリュウジャーの声にも聞き覚えがある気はするのだが、さっぱり思い出せない。ノブハルはなんでも屋だから、いろいろな場所に顔を出す。もしかしたら、その過程で話したことがあったのかも知れない。
 どの声もずいぶん若いような気がした。同年代は一人もいないだろう。下手したら、十歳くらい年が離れていたりして。
 ちょっと心細い。
「若者と和解するのは難しいかもなー、なんて」
 ひとりで笑いながら最後の角を曲がる。
 だが、愛車を見た瞬間に氷河期が襲来した。
 フロントガラスに貼り付けられた黄色、その下でひらひらしている白色――駐車禁止のステッカーを見下ろし、ノブハルはぽかんと立ち尽くす。
「えっなにこれ。これもデーボス軍の仕業? 嫌がらせ?」
 配送中のプレート――デーボスを倒す出張サービスで平和をお届け中なのだから、間違いではないと思う――を出しておけばよかった。後悔しても後の祭りだ。
 確かに、放置していったノブハルが悪い。悪いが、もとはといえば、タイミング悪くデーボス軍が出現したことが原因なわけで。
「許すまじ……デーボス軍……」
 しばらくは、缶コーヒーの一服を我慢しよう。
 がっくりと肩を落とした。

*  *  *

 キョウリュウジャーほんと面白いなあ(〃▽〃) ソウジに続いてノブハル編です。
 しゃべり方とかよくわからないし、いろいろ飛ばしすぎてると思います。ついつい書きたくなってしまって困る。